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その日は会社は休日で、泰介のところへ来ていた。
「洗濯物は、ここね。」
「あいよ、姉ちゃん。」
こうして見ると、泰介は病人には見えないけれど、いつ命を奪うかもしれない爆弾を、脳に抱えているのだ。
そんな時泰介が、俯きながら言った。
「姉ちゃん。俺、このまま死んでもいいよ。」
「なに言ってんの。人生、これからじゃない!」
「うん。でも、姉ちゃんの重荷には、なりたくないんだ。」
「泰介……」
病院の帰り道、電信柱の影に、闇金の広告が載っていた。
「もう、お金を借りるしかないか。」
私はその闇金の電話番号を控えて、電話をした。
もうその日は夜になり、猶予期間も過ぎていた。
それでいい。
本田さんとは、あの日だけの縁だったのだ。
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