我が家にこどもがやってくる

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今日は特別な日だ。 なんたって子供がいない我が家に子供がくるのだから 僕、マモル(四十歳)は朝からそわそわしていた。 こんな時に限って女の化粧はながいものだ。 普段は全く気ならない彼女の行動なのに、 僕は自分がイライラしていることに気づき、はっとした。 子どもをもつ父親がこんなことではいけない。 冷静さをたもつように「羊が一匹、二匹、三匹…… 」と五百五十匹ごろになって、 ようやく準備万端といったいでたちで妻が登場した。 「お待たせしました.行きましょうか」と言い、 妻の有里(三十八歳)はタクシーを拾い、 「クマムシ神社まで」と告げた。 クマムシ神社は神道系で、敷地内に幼稚園と乳児園にいくのだ。 マモルと有里は里親縁組制度を利用して、 この乳児園にいるハジメ(三歳)を 家族として迎え入れいようとしていた。 タクシーに乗る道中でハジメと初めて出会ったときのことなど、 諸問題が山積みであったが夫婦で乗り越え、 恋愛の延長だったおままごとから一段飛躍したなとマモルは考えていた。 有里は早くも幼稚園を探していて、 併設しているクマムシ幼稚園のプレ幼稚園園児コースに通わせたいやら、 お稽古事はなにがいいかしらと実務的なことを考えていた。 道中、タクシーの運転手さんが話しかけてきた。「お参りですか」と尋ねてきた。 有里は「子供を迎えに行きます」というと運転手は「じやあ、帰りはどこかへ寄 りますか」と聞いてきた。 話がややこしくなりそうなので、僕は「ええ」と答え黙った。 タクシーの運転手はどう判断したのか 「訳アリ」と判断したらしく無言になり、ラジオをつけ始めた。
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