特別な日。

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「馬鹿馬鹿しいわ」 妄想もそこそこに立ち上がって、水飲み場の蛇口を捻れば勢いよく水が出た。近くに転がっていた砂遊び用のバケツでそれを汲んで、頭から一気に被る。時間をかけたメイクも、ゴシゴシと手で擦って落とす。 ぐちゃぐちゃだ。見た目も、中身も。 それでも、なんだか気持ちがいい。 気持ち良さに浸るように空を見上げていれば、バッグの中の携帯が震える。画面には連絡アプリの通知が一件。 『太郎くん: 誕生日おめでとう』 慣れた手つきで彼の連絡先を削除して、ワンピースのポケットに携帯を突っ込めば、何かが当たる音。探って現れたのは埋めたピアスの片割れで。 持っているのも縁起が悪い。ぽいっと捨てれば足元の排水溝へと落ちていく。一緒になることはないピアスに、彼らを重ねるくらいは許してほしい。 さて。帰って、暖かいシャワーを浴びたら、デリバリーでピザを頼もう。買っておいた小さいホールケーキを一人で食べて、テレビを見て笑って、寝て起きたら、今までとは違う、特別な明日が来てるはずだから。
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