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翠子はカレーライスにチーズをトッピングした後、それを美味しそうに頬張る。彼女の美味しそうに食べる顔が学校生活内での数少ない癒しの一つだ。と彼女を眺めていると、ふと思った事を無意識に口に出した。
「こう私達が話してるこの内容を、あいつらに直接ズバッて言いたいんだよなぁ。」
と言って1秒も立たないうちに翠子は答えた。
「そんなの無理だよ。」
「え、そんなにきっぱり言わなくても…」
「あいつらに言ったってどうせいう事聞かないと思うし、それに…うちらみたいな目立たないのが反抗したって、どうせ後で弄られるか、馬鹿にさせるか、裏で悪口言われるか…。」
先ほどまで笑顔だった彼女の表情が曇っていく。自信のない、絶望に満ちた感情が隠しきれない顔。
「め、目立たないだなんて!自分の事自虐してどうすんだよ!それに…えっと…」
必死にフォローしようとしたが、しばらくしないうちに自分も彼女と同じ感情に染まってしまった。
実際私達が底辺だという事は完全に証明できない。というのも、私も翠子もクラスメイト達とは表面の関係では良い方だし、如何にも陰キャラかのような感じは出していない。しかし、クラスメイト達が私達の事をどう思っているかはわからない。彼女は皆が自分を陰キャラだと思っている、という被害妄想をしているみたいだが、本当にそう思っているのかもわからない。私か翠子が「相手の思っている事が分かる能力」などを持っていない限り。だから私は、自分が底辺じゃないという事を信じ続けている。その為に勉強を頑張ってクラス上位の成績を取ったりしているのだから。運動だって頑張っている。…「もしも」の時の為に。
「次の授業って何だっけ?」本当は次の授業の教科は知っているが、この暗い雰囲気をなんとかごまかそうとわざと聞いてみる。
「えっと…次は化学だ!最悪~、うち化学苦手なんだよね。」
「じゃあ問題解く時間の時に席移動して教えるよ!」
「ありがと!助かるわ。」
授業5分前を知らせるチャイムが鳴り響いた。何となく尿意を感じたので私はトイレへと向かった。その『何となく』が、私にまた地獄を見せてくれた。
トイレもまた数少ない癒しの一つで、仏教ネタで例えるならば、「極楽浄土」である。
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