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「罰当たりなこと言わないでちょうだい」
明らかに興味を失った依舞を軽く叱り、母は手を合わせて「皐月を無事にお返しいただき、ありがとうございます」と目を閉じた。
つられて、依舞も皐月も手を合わせた。
そうしながら、皐月はもう一度本殿への扉を見つめた。
この拝殿で倒れていた理由は自分でも分からない。
でもたったひとつだけ、ずっと皐月の胸の奥を占めている。
大切な何かをどこかに置き去りにしてしまった喪失の強い痛みだった。
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