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「大丈夫ですか?」と声をかけるより早く、依舞が飛び出すように駆け寄って手を差し伸べた。
幼い頃からずっと守ってきたつもりの妹は、皐月のことを叱咤もする、もうひとかどの大人の女性だ。
そのことが皐月には寂しくもあり、なんとなくその場にとり残された。
依舞とその女性との間に会話が交わされ、それぞれ頭を下げあって別れる様子を見つめていると、女性は去り際に皐月にも一礼した。
誰だったか記憶を探りながらもゆっくり頭を下げた。
「あの人、おばあちゃんの妹だって」
「え、そうなの?」
「うん、一番下の妹だって言ってた。ママなら分かったかもしれないけど」
皐月も依舞も本家とのつきあいはだいぶ薄い。
そのせいか従兄弟たちも大勢集っているはずなのに、挨拶を交わしたきり特に話をするわけでもなく、つまりは孤立していた。
だから裏方の手伝いを通して少しでもこの大きな屋敷での位置を見出そうとしていたのもしれない。
「お、皐月ちゃん、依舞ちゃんも。ご苦労さん」
襖が音もなく開いて、赤ら顔のおじさんが少しふらつく足どりで広間から出てきた。
母のすぐ上の兄である匡伯父だ。
皐月と依舞に気づいて立ち止まった。
「ずっと手伝いじゃ食えねえっぺよ。誰か代わってもらったらいいんじゃねか?」
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