再会

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 思わずホッとした皐月は、「うん」と白彦に微笑みながら頷いた。 「……髪、伸びたね」  そう言いながら白彦は眩しそうな目で皐月の髪にかすかに触れた。  あまりにも自然に伸びてきた手を避けることもできず、皐月は思わず息をとめた。 「昔と変わらない、きれいな黒髪だ」  黒髪から皐月の目へと移ったその視線に、包みこむような優しい光を見つけたせいもあったと思う。  急に触れられているところが熱をもち、皐月は白彦をまっすぐ見られなくなった。  その場を破るように、再び座敷から白彦を催促する声が届いた。  白彦は皐月からついっと離れると、大きな声で大座敷の方に向かって「今もってく!」と返事をした。 「また声かける」涼やかに笑って座敷へとあがっていった。  その後ろ姿は、かつて追いかけて遊んだ小さな背中ではなく、すらりと背が伸びて肩幅もしっかりした大人の男性のものだ。  声をかけられるまで白彦のことをさっぱり忘れていた。  どんな遊びをしたかとか、たくさんつくったはずの思い出のほとんどを思い出すことはできないけれど、ただその幼い時の楽しかったという気持ちや想いは、封印がほどけたように深いところから沸き上がってくる。  自我の輪郭があいまいな子どもだったからこそ、白彦とは、より強く結びついていた。     
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