序章

1/9
243人が本棚に入れています
本棚に追加
/347ページ

序章

 幼い頃、狐の嫁入りを見たことがある。  おぼろげな記憶の中、苗が儚げな田んぼの上に広がる空は晴れていた。  なのに、薄絹のような雨が降っていた。  そのせいかあたりの景色は白くけぶって、足元から伸びた農道は田んぼとともにぼんやりとして、まるで見知らぬどこかへ誘うようだった。
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!