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「あの、MIUさんですか?」
えっ?!と思いつつ、私は振り向いた。
そこには、さっきボタンを押した男子学生がいた。
「さっきまで、talknowで話していたSYOです!違ったら忘れてください!」
「い、いや…あってますけど…」
「三丁目ってつぶやいてたからそうかな?と思って!
俺は家この近くなんですけど、MIUさん違いますよね?」
「ここから20分位歩くんで、まぁまぁ遠いですね…」
無数の欠片が風の吹く方向へ飛ばされていく中、二人は立ち止まったまま。
「あ、じゃあ送っていくんで、一緒に話しませんか?」
は?!新手のナンパか?と思ったけど、
私は慣れない夜道に心細かったのもあり、特に断らなかった。
吹雪の中、二人は一歩ずつ踏みしめて道を作っていくように進んでいく。
「星城受ける人ってこの近くいないから、MIUさんのつぶやき見たらつい嬉しくなって。
親御さんは反対しているんですか?」
「うん、まぁ実家のほうが安心だろうし。ってかタメ語でいいよ。同級生だもん。」
「それもそうか。なら、お言葉に甘えて。教育大も悪くないとは思うけど、
星城受けるってなれば先生も応援してくれそうだけどね。」
「私の高校そんな頭良くないから、教育大すら年に5人もいかないし、
ましてや星城なんかって感じだからさ。予備校なんか行ってるの私くらいだし。」
「へ~そこまで努力しているんだったら、なおさら星城行かなきゃな!」
「………。」
答えに迷っていると家の近所についた。
「あ、私の家ここらへんだから。ありがとう。良かったらまたtalknowで絡んでね。」
そう言い残し、家の方向へ向かおうとした私を彼は引き留めた。
「あのさ、名前、なんていうの?俺は翔。そのまんま!」
「私も、美羽。そのまんま…だね。」
「なんだ~可愛い名前だからハンドルネームかと思ったよ!じゃあ、星城で会おうな!」
彼は切り替えが早いのか、すぐに逆方向へ向かって歩き出してしまった。
私は"可愛い名前"というワードに反応して顔が熱くなっていた。
が、すぐに氷点下の空気がその凍てつく風で冷やしていた。
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