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翌朝、雪はすっかり降り止んだが、窓から見る世界は真っ白なままだった。
コーヒーをすすりながら、父親が単刀直入に告げた。
「美羽、お父さんもお母さんも、教育大に行ってくれると思っている。
それでいいんだよな?」
最悪な聞き方だ。
「いいなんてわからないけど、それしか許してくれないんでしょ?」
言い捨てるように私はカバンを持って家を飛び出した。
そこから時が進むのは本当に早かった。
あっという間に願書の受付期間になって、
学費どころか受験の旅費すら工面できそうになかった私は、
仕方なく教育大へ願書を提出した。
『MIU:教育大に出した。もう後には戻れない。』
翔からの返事を期待したけど、ラストスパートをかけているのか、何も反応は無かった。
受験当日も、ニコニコしながらお弁当を手渡してくる母親が本当に嫌だったけど、
自分の運命だと半分諦めて受験会場である教育大に向かった。
試験自体は勉強してきた内容が当たったのか、特段「落ちた」という絶望感も無く、
数週間後には予定調和のように合格通知が届いた。
「美羽、やったじゃない!親孝行な娘を持って幸せだわ!」
「美羽、おめでとう。教育大はいい大学だ、しっかり勉強しなさい。」
これまた予定調和のような両親の祝福は、1秒も胸に響かなかった。
その時、何気なく携帯を開くと、追い打ちのような一文が目に入った。
『SYO:星城大受かりました!春から頑張ります!地元のみんな今のうちに遊んで!笑』
「そっか…翔は受かったんだね。」
私はほっとしたような、少し寂しいような気持ちで祝福をした。
『MIU:>SYO おめでとう!私も教育大受かったよ。お互い頑張って良い先生になろうね。』
打っているうちに、涙が出てきた。
ずっと悩んでいた、自分だけの道。それを決めかねている時に背中を押してくれた人。
それでも、親の反対を覆せなかった自分の力不足、環境の悪さ。
世界中が自分を敵視しているような、孤独な気分が急に増幅していった。
でも、現実はそんな簡単には変わらないのだ。
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