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三月のとある日。
高校の卒業式もとっくに終えて、自由の身だと皆が浮き立つ中、
私は新幹線の駅にいた。
「来てくれて嬉しいよ。それと、教育大合格おめでとう。」
「ありがとう。そっちも星城大合格おめでとう。本当にすごいよ。」
「あはは、ありがとう。でも、大事なのはこれからだよ。」
ふと、その言葉が胸に突き刺さった。
今まで私は、行きたい学校に行かせてもらえなかった自分を悲観していて、
春からの自分にはちっとも考えが及んでいなかった。
「これから?」
「そう。どんな大学にいっても、先生になるとそんなの関係ないだろ?
お互い良い先生になれれば、この選択は間違いじゃないって思えると俺は思うよ。」
涙が溢れてきた。笑顔で送り出したかったのに、とんだ失態だ。
「あ、ありがとう…でも私、本当に、星城行きたかった…。」
「でも、先生になる夢はここで消えたわけじゃないし、逆に道は繋がったんだ。」
「うん…」
「お互い、頑張ろうな。」
「うん…」
「じゃあ、そろそろ時間だから!見送り、ありがとう。またどこかで。」
「うん、またどこかで。」
自由席に乗り込んだ翔を、私は見えなくなるまで手を振って見送った。
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