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1st point 雪がくれた出逢い
「お客様にお知らせ致します。現在、降雪のためこの路線は運転を見合わせております。
お急ぎのお客様には大変申し訳ございませんが、復旧目途も未定となっております…」
あの日の夜、私は予備校の授業を終えて帰りの電車を待っていた。
普段ネオンで飾られた繁華街は真っ白に染められていて、
街全体が沈静化されたような、静かで均一な景色が広がっていた。
「あぁ…寒っ。こんなに降るなんて聞いてないよ!」
決して重装備とは言えない、制服にマフラーをしただけの私は寒さに震えながら、
どうやって帰ればいいかプランを立てようと携帯を手にしていた。
両親は共働きなので、迎えに来てもらうことも不可能だ。
そもそも両親が無事帰宅できるかさえ危ういと思った。
ホームには、同じく突然の運休にどよめく人々がごった返していた。
振替輸送もあるはずなく、この駅から出る電車はほぼ運休となっていた。
思い思いに吐き出された、うんざりした台詞が空しく冬の空に響き渡る。
私はバスの時刻表を検索した。
ちょうど、家まで20分くらい歩いたところにあるバス停ならば、
まだ動いているバスがありそうだった。
「よし、これでいこう。」
人ごみをかき分けて、バスターミナルまで走った。
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