特別な日

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『今日は特別な日だ』 その朝、私はそばで眠っているAに向かって、そっと手を差し出した。 気配を感じたのか、Aは目を開けて私の手を握り締めた。 そのまましばらく見つめあい、私はそっと手を引いた。きっとAは何らかを察したはずだ。長い付き合いなのだから、言葉は要らない。 今は6時半頃だろうか。お盆が過ぎ、少しづつ秋に向かっているというものの、今日も蒸し暑いのだろう。 ただこの部屋はエアコンが程よく効いている。 Aがやがて起きだし、食事を作っている。私は食欲はない。Aも食欲がないようだ。 どんどん外気温が上がっているのが、窓ガラス越しに伝わってくる。今日も空は青いのだろう。 私の傍らでAは何やら作っている。落ち着かないのだろう、不安なのだろう。 ただ私は幸せだ。この『特別な日』をAと共に迎えられることができるのだから。
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