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何故わざわざこんな儀式めいた事をするのだろう。
ふと思いついて、十歳の自分へ送るメッセージを変えてみようかと思う。
記憶にないメッセージを送ったらどうなるのだろう。
怖いような気もする。
今の自分が消えて無くなってしまうかもしれない。
過去のどんな一瞬も今の自分に繋がっている。
過去を変えたらどうなるのか。
或いは、これは今の自分を変えるチャンスなのだろうか。
十年前に受け取った言葉が違っていたなら、今の自分はもっと別の生き方を送っていたかもしれない。
私は慎重に言葉を選ぶ。
鏡の中に現れた十歳の自分が、私にメッセージを伝え始めた。
「私が伝えたい事は、この本をもう一度読んで欲しいってこと」
そう言ってお気に入りだった本を掲げて見せる。
憶えてる。
それを聞くと分かっていたから、今も私の手元にその本がある。
十年間開くことなく持っていた。
私は息を吸って、十歳の自分を面映ゆいような気持ちで見つめ、ゆっくりとメッセージを贈った。
「三十歳の私は鏡に映らなかった。でも、どこかで、きっと運命は変えられる」
三十歳の私からのメッセージはない。
鏡に映らない理由は、三十歳まで生きていないから?
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