【スイッチの世界】

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アスカは白い世界の中で、あの黒い建物の前に立っていた。 扉を見つめてみては、扉の前をウロウロとする。躊躇していても仕方ないのはわかっている。 【スイッチ】はまたも手元からなくなっている。 帰るにはここに入るしかない。 そうとはわかっているのだが、得体の知れない仮面人間━ペルと何を話せばいいのか。 それに、前はすぐに【スイッチ】を渡してくれたが、今回もそうしてくれるとは限らないではないか。 アスカは興味本位でまたあの【スイッチ】を押してしまったことを後悔し始めていた。 自分の性格は自分が一番よくわかっている。 なんてよくいうが、アスカは興味を持ってしまうとやってみないではいられない。 興味が持てないものが大半を占めるアスカの世界のなかで、興味が生まれたものには触れずにはいられないのだ。 そのくせ変なところで臆病だったり、優柔不断なところもあるから厄介だ。 こんな私がなんでアイドルをやっていられるのだろうか、と思わない日の方が少ない。 「はぁ…」 息を吐いて、覚悟を決める。 木製のドアを軽く叩いた。 すると今回は施錠を外す音はなく、すぐに扉が開いた。 扉の間から、ひょっこりと白い笑顔の仮面をつけたペルが首をだす。 前回と変わらない格好。 想像していたから平常心でいられるが、やはり仮面だけを見ると不気味ではある。 「なんだ、アシュ。また来たの?」 セリフの割に、声のトーンは嬉しそうだった。
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