■1:スイッチ■

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ふと、テーブルの上に置かれた箱に目が留まった。 マネージャーさんが置いて行ったアスカ宛のファンレターなどが 入っているものだった。 のそのそと起き上がり、アスカはその中身を物色し始めた。 私なんかのために、こんなにたくさんの・・・ありがたいことだ。 アスカは丁寧に手紙をあけて、中身を読んでいく。 かわいい、応援してます、頑張ってください、憧れです、大好きです・・・たくさんの熱いメッセージ。 小さな子供から、アスカの3倍以上の年齢の人からも。中には、本気で書いたという熱烈なラブレターだったり、親のようにあのときはああしたほうがよかったなど嗜めるメッセージまである。 いずれもアイドルとしてのアスカに向けられたものだ。 けれど、アスカ自身にとってそれはただの美辞麗句でしかない。 TVに映るアスカの姿も、ラジオから聞こえるアスカの声もアイドルのアスカであり ありのままのアスカとは違う。 違うようにしているのは自分ではあるけれど、自分自身のままでアイドルとして やっていけるとは到底思うことはできない。
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