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そうそう、そんな話だった。
それでその老婆は言うのだ。
ここにいる死体たちは、こうされても仕方ない者たちだ。
生きていた時にひどいことをやっていた。
けれどこいつらも生きるために仕方なくやったこと。
だから自分も生きるために、この死体たちの髪をもらうのだ。
それは仕方ないことだろう…と。
「男はそれを聞いて、一つの思いが生まれる。そして、
『ならば、俺が生きるためにお前から追いはぎをしても文句はないな。』
といって、老婆の服をはぎ取って、夜の闇へ消えていく。」
なるほど、教科書に載っているのもわかる。
ストーリーはシンプルだけど人間の本性みたいなものを考えさせられる内容だ。
ペルがそこまで話して、紅茶を一口飲んだ。
そして
「アシュはこの男と老婆、この後どうなったと思う?」
「服を盗んでいった男と残された老婆?」
授業でも考えたことがない質問だった。
「そう、羅生門の最後は、
服をはぎ取られた後、しばらく、死んだように倒れていた老婆がうめくような声をあげながら、
門へとつながる梯子まで這って行き、門をのぞき込む。
けれど、『外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。下人の行方は、誰も知らない。』
って終わるんだ。」
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