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もし、帰れなくなったとしたら、
ペルと同じように、悠久の時をここで過ごす事になるのだろうか。
それもいいか。
戻ればまた、他人を考えなければいけない。
戻ればまた、自分を考えなければいけない。
何度自分を創って、自分を殺したのだろうか。
偽善と利己主義を振りかざして、他人を踏みにじって生きる存在でいたくない。
嘘や詭弁で塗り固めてまで、誰かが望むだけの自分を生きながらえさせたくない。
偶像でしかない自分なら、この白い世界に吸い込まれて、何もかも跡形もなくなればいい。
地面にへたり込んだまま、扉を見つめてそうなればいいと祈るように胸の前で手を組んだ。
その時だった。
目の前の分厚い扉がゆっくりと開いていく。
ノックをしないで、扉が開いたのは初めてだった。
現れたのは、笑顔が張り付いたような白い仮面をつけた人間だ。
いつもと同じモーニングとかいう、執事のような恰好をしている。手には白い手袋。
「ペル…。」
泣き顔を見せるのはなんだか癪だったが、止めることができなかった。
「アシュ、そこで何しているの。」
ペルは入口に立ったまま、アスカを見下ろしていた。
「早く入りなよ、いつまでもそんなとこで座ってないでさ。」
いつかどこかできいたような言葉。
アスカはほっとして、泣いたまま笑っていった。
「なんだか疲れちゃった。」
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