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ペルの表情は読めない。
怒っているのか、憐れんでいるのか、悲しんでいるのか、仮面の通り笑っているのか。
アスカはしばらく目の前のペルを見上げ、ペルはアスカを見下ろしていた。
「そう。」
少しの間が空いたのちに、ペルが言った。
そして、ゆっくりと歩いて正面まで来ると、アスカの前で膝を立てて座る。
アスカはそれを目で追うしかできなかった。
体に力が入らなかった。
ペルの両手にゆっくりと包みこまれる。
アスカの肩をそっと抱きしめたまま、ペルはゆっくりと歌いだした。
ペルが歌っているのを初めて聞いた。
なかなかいい声だ。誰かの声に似ている。
ものすごく上手いというわけではないが、体に染み込んでくる感じ。
あなたを傷つけるすべてのものから守りたい。
ペルの腕に抱かれたまま、その歌が終わるまでずっと聞いていた。
「いい歌、誰の歌?」
アスカはその歌が誰の歌か知らなかった。
ペルのオリジナルかとも思った。
違うな、きっとそう思いたかっただけ。
アスカは歌の途中から、ペルの肩に頭をあずけていて、
ペルは子どもを寝かしつけるように、アスカの背中をゆっくりトントンと叩いていた。
いつの間にか涙は止まっていた。
ペルは泣き止んだのを確認して、胸元からアスカを離した。
そして。
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