■4:ある一人のアイドルの形■

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【スイッチ】を押し、世界が変わるとすぐにアスカは駆け出した。 もちろん、あの建物に向かって。 今までぼんやりとそれぞれにあった点が、アスカの中で全て繋がり、線になる。 その瞬間、アスカにはペルの正体がわかった。それこそ【スイッチ】を入れた電気回路のように、一瞬のうちにそれは繋がったのだった。 こんな形で、ペルの正体を知ることになるとは思ってもみなかった。 肩で息をしながら、黒い建物の前までたどり着いた。 鉄製のドアノブに手をかける。 ドアノブの正面に刻まれた文字。 『I.P』 その文字の前に、もう一つ文字がある。 そっと親指の腹でそこにあったであろう文字に触れてみた。 かすれているが、触れて見て、思っていた言葉と違いないことが分かった。 アスカは力を込めてノブを下げると、扉を押した。 いつもはペルが開けてくれていた扉。 自分で開けるのは初めてだ。 分厚い扉は、ギィという古めかしい音を立てて開く。 『やぁ、アシュ。ずいぶん遅かったね。』 初めてペルと出会ったときの言葉が思い出された。 そう、遅かったのだろう。 全て理解できたわけではないが、きっとこの回答にはもっと早くたどり着けた。
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