■4:ある一人のアイドルの形■

5/16
前へ
/55ページ
次へ
「ペル…」 梯子を伝って屋根に上がると、ペルは建物の先端部分でこちらに背を向けて立っていた。 ピンと足を揃えた直立のまま、どこまでも続く白い世界を見つめている。 長い黒髪が、モーニングの腰ぐらいまで垂れていて、その両脇には小さな手がしっかりと握られている。 アスカの存在にはまだ気づいていないようだった。 ペルの背中まで、あと数歩というところで、アスカはその背中に叫んだ。 「いつまで1人ぼっちでいる気?」 ペルは振り返る。 「アシュ…来てたんだね。」 「どうせ来るって知ってたんでしょ?」 「あーあ、バレちゃった…か。」 バレたというよりも、この時がついに来てしまったかという風に聞こえた。 ペルは身体ごと、アスカに向き直り、アスカと相対する。 いつも通り、笑顔の張り付いた白い仮面。 その奥から、ジッとアスカを見つめる視線を感じる。 「問題です!」 突然、ペルが声を発する。 「さて、ここはどこでしょう?」 いつも通りの少しおどけた声。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加