百メートル先の世界

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 その後、しばらく談笑に付き合った俺は、戻ってきた保険医にがっつり叱られた。なのに久永が取り成したら説教が尻すぼみになって終わったので、イケメンはつくづく得をしていると思った。  それからしばらく経った日の、体育の授業中。  グラウンドに立った俺は、きれいに晴れ上がった青空を見上げ、眉をしかめた。日差しが強い日は久永にとっては鬼門だ。これまで何度か気持ち悪そうにしているのを見たことがある。  しかし、当の本人に自覚はあるのかないのか。いつも通り楽しげにクラスメイトとふざけ合っている。そんな久永を遠目に眺めていると、頭痛がしてくる。  体育教師が二人一組になるように、と言ったのを合図に久永に駆け寄った。近づいてきた俺に気づくと、久永はにこっと笑いかけてきた。 「なに? 俺と組む?」 「……あぁ」 「いいよー。やろやろ」  いいよー、じゃない。誰のためだと思ってるんだ。  ため息を胸中で押し殺して、久永と向かい合う。久永に罪はない。俺が勝手に守ってやりたいと思っているだけなんだから。  柔軟をしておくように、と言い置いて、体育教師は体育委員と用具を取りに行ってしまった。  残された生徒たちは適当に柔軟らしいことをしたり、雑談に興じたりしている。  俺たちも一応、背中を押し合ったりしていたが、その内ふとあることに気づいた。
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