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いつも貧血で気を失ったときに久永を持ち上げるとやたらと重く感じるのに、今はとても軽く感じる。
「おい、久永。ちょっと持ち上げてみていい?」
尋ねてみると、久永はただただ驚いて目をぱちくりとさせていた。
「はぁ? 何で?」
「いや、いつもお前運ぶとき、すっげぇ重いのに、こうやって柔軟してるときは重くない気がして。不思議じゃない?」
すっげぇ、のところをやや強調していうと、罪の意識にかられたのか久永は両手を上げて、恭順の姿勢を見せた。まぁ、こちらがわざと罪悪感を持たせるような言い方をしたのだが。
「いいよいいよ、好きにしてくれ」
「えっと……」
しかし、自分から言い出したものの、いつもは意識のないコイツを持ち上げているので、立っている体勢からどうやって持ったものか迷う。動かない俺を前に、久永は首をかしげて突っ立っている。
黙って見上げられると何だか焦る。とりあえず、いつも通り肩に担ぎ上げようと膝をついて腹回りに腕を回すと、協力しようとしたのか久永が首にしがみついてきた。そのまま立ち上がった結果、思っていたのと違う持ち上げ方になってしまい、首をひねる。
「……あれ?」
これは横抱きというか……何かすげぇ恥ずかしい抱き方の気がするんだが。
「ん? 何か違った?」
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