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安心させるように、久永の小さな頭をぽんぽんと叩きつつ安本に向き直った。
「いや、俺たち付き合ってねぇよ?」
「俺は知ってるよ! つか、だからお前のそういうとこだよ!」
「へ?」
半ばキレ気味に突っ込まれて困惑する。頭を叩くだけでホモ認定されてしまうのなら、俺にはダース単位で恋人がいることになってしまう。
そこまで考えて、そういえば久永以外の誰かとこうしてスキンシップをすることはあまりないことに気づいた。……俺のせいなのか?
「ば、ばかじゃねぇの!」
久永が叫んだと同時に、体育教師の笛が鳴った。それと同時に、スタートの用意もしていなかった久永は真っ赤になって走っていってしまった。
貧血なだけあって、基本的に久永の肌は白っぽい。ここまで血色がいいのは珍しく、普段からこのくらいの顔色だと安心出来るのになぁ、と後姿に目をやりつつ思う。
……ただ、今走るべきなのは能登だったんだけど。
まさか久永が順番を抜かして走り出すなんて思ってもいなかったのだろう。可哀想に、大きく出遅れた能登はきっとロクな記録にならない。
「……ひょっとして、久永、見たことあるのかな」
安本がぼそりと呟いたが、久永のフォームに見とれていた俺にはもはやどうでも良かった。
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