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横目で眺めていると、閉じていたまぶたがゆっくりと持ち上げられる。女子がイケメンだとはやし立てるだけあって、睫が長い。ぼんやりとした瞳が徐々に焦点を結び、真横で見ていた俺と目が合うと、大きく見開かれた。
「う、わっ、保志場っ!」
慌てて起き上がろうとするが、見えない何かにぶつけたかのように頭を抱えてシーツに逆戻りする。眉をしかめてうなり声をあげた久永に若干の哀れみを感じて、手のひらをそっと瞼の上にのせた。
「まだ起きない方がいいんじゃないか?」
「ごめん……俺、また倒れたんだ」
しおしおと謝られると、ますます気の毒になる。
身体を起こして頬杖をつき、軽く頭をなでてやると、彼は気持ち良さそうに目を閉じた。
やわらかい髪が横に流れ、おでこが見えるといつもより印象が幼くなる。
人気のない保健室にしばし穏やかな時間が流れた。
「ていうか何でお前までここで寝てんだよ」
頭を撫でていた手首をどかし、ようやっと目を開いたと思ったら、久永は憎まれ口を叩いてきた。
「はぁ? それが倒れたお前をここまでひとりで運んできてやった恩人に言うことか? お前、すげぇ重くて疲れたから休憩してんの。文句があるなら体重減らせよ」
「普通、文句があるならもう倒れんなよ、って言うとこじゃねぇの」
呆れたように屁理屈を言うその声は、いつもに比べてずいぶんと弱々しい。まだ調子が悪いのだろう。
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