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「……保志場って常識人のようでいて、どっかちょっとズレてるよな」
そう言って笑う、その声はなぜか楽しげだった。まだ顔色は白っぽいが、倒れたときよりはだいぶ血色が良くなっている。
ひとまず安堵し、壁に掛かった愛想のない時計をちらりと見る。いくらなんでも、そろそろ戻ったほうがいい頃合だろう。
しかし時刻を確認した俺に気づいた久永が妙にさみしそうな顔をするから、少し迷って結局ベッドの端に浅く腰掛けた。以前久永は貧血のときは頭痛がすると言っていたから、話し相手になって欲しいのかもしれない。
「そうか? ていうか、貧血ってそんな急になるもんなわけ? 朝起きたときから、今日は調子悪いな、とか分かんないの?」
「……お前が貧血になったことのないヤツだっていうのが、よぉく分かった。そんなの、前もって分かるもんなら全校集会なんて出るかよ」
言われてみればそうだ。戦に赴く兵士じゃないんだから、ぶっ倒れるリスクをおってまで、誰が全校集会になんか出る。
気を紛らわせようとして、逆に不快にさせてしまった。罰が悪く頭をかいていると、久永はふと瞼を伏せた。
「調子良いか悪いか、って話なら俺、毎朝調子良くないんだよ。貧血な上に血圧も低いし」
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