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「でも、倒れるたびにお前が支えてくれるから。変な話だけど、俺、ちょっと安心しながら倒れてるんだよ。ありがとな」
気丈に笑って見せる、その健気な笑顔に胸を打たれた。同時に面倒だと思い始めていた、己を恥じる。周りの生徒に向けられる好奇の視線がわずらわしくて、久永を助けてやることが億劫になり始めていた。
だが今は、名前順が前後しているおかげで、倒れそうなときにいつもそばにいてやれたことを、よかったとすら思う。
しかし、そんな思いをを同級生に告げられたって、久永も困るだろう。実際、こんな気持ちになってしまった俺を、自分自身が持て余しているぐらいだ。
「お前な……お前が安心してる分、俺はお前がいつ倒れるんじゃないか、ってひやひやしてるんだけど」
呆れた風を装って眉を顰めて見せると、久永はまた笑って謝ってきた。
「ははは、ごめんな」
少し重くなりかけていた空気が、久永が笑うだけで明るく変わる。おだやかになった雰囲気にほっとして、俺は軽く久永を小突いた。
「やっぱ倒れないように努力してくれよ」
「それが出来たら倒れてなんかねぇよ」
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