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愛舞 #2
秀一は美姫の手を取ると、くるりと躰を反転させ、今度は逆に美姫を抱き締めた。
「ピアノを演奏することは、私から苦しみや悲しみを忘れさせてくれましたが……本当に私を救ってくれたのは美姫、貴女なのですよ」
「えっ、私、ですか……?」
突然出てきた自分の名前にビックリして目を瞠る美姫に、秀一が彼女の両頬を優しく包んだ。
「えぇ。貴女を初めて見た瞬間のあの気持ちは、一生忘れることはないでしょう……まるで、私の人生に一筋の光が射し込んだようでした。
貴女は、私に光を、笑顔を、そして……人を愛するという気持ちを与えてくれました」
生まれた時の話をされて、自分達の年齢差、そして叔父と姪である関係を思い知らされつつも……自分の存在が秀一の救いになっていたという事実に、言い尽くせないほどの幸せが美姫の胸の奥から溢れてきた。
「だから……私は貴女という『光』を失うわけにはいかないのですよ、美姫……」
秀一の瞳の熱情に焦がされ、美姫の躰は狂おしい程の疼きを感じた。
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