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「さぁ、ここですよ……」
秀一が美姫を廊下の奥にある扉へと案内する。鍵を差し込むと、ガチャリと無機質な音が廊下に響いた。
秀一は左手にある照明と暖房のスイッチを入れると、美姫に中に入るよう促した。美姫は、おそるおそる足を踏み入れた。
「っ……こ、れは……」
そこは、壁一面が鏡張りになっていた。床はフローリングで、部屋の片隅には背もたれのない白い革張りのベンチシートがおかれているだけの殺風景なスペースとなっていた。なんとなく違和感を感じてふと上を見上げると、天井も鏡張りになっている。
「このコンサートホールは、演劇場としても利用されます。
ここは、演劇の練習の為に造られた特別な部屋なのですよ。役者は左右だけでなく、会場の上からも見られますからね。それを意識して演劇を練習する為の部屋です」
秀一に説明されて、美姫は納得がいった。
「そう、なんですか……でも、なぜここへ私を案内したのですか?」
演劇をするわけでもないのに……
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