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憂慮 #2
タクシーの車内では、誠一郎と凛子は初めて見るウィーンの景色を見ながらお互いに感想を述べ合ったり、ガイドブックを覗き込んだりしていた。
仲の良いふたりを見ていると、美姫は幸せな気持ちとともに嫉妬のような気持ちも湧き上がってくる。
夫婦であり、仕事上でもパートナーである誠一郎と凛子はどこへ行くにもいつも一緒だ。幼い頃はそんなふたりが羨ましくもあり、寂しくもあった。
......自分はいつも置いてきぼりで、家でふたりの帰りを待つ身。
自分もいつか愛する人と結ばれたら、両親のように公私ともに支え合う夫婦になり、寂しさなど感じることのないようになりたい......そう、願っていた。
そしてその相手は、秀一であればいい、とも......
だが、叔父である秀一とは結婚出来ないことを知り、その夢は砕け散った。恋仲になれた今ですら、夫婦どころか恋人同士であることも打ち明けることが出来ない。
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