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ウィーンの大晦日イベントのハイライトであるホーフブルク王宮で開催される「王宮大晦日舞踏会」は、その歴史は古くハプスブルクの時代にまで遡り、「皇帝舞踏会」と呼ばれていた。現在、舞踏会はチケットさえ購入すれば誰でも参加でき、世界約40カ国から2500人が集まる大舞踏会イベントとなっている。
舞踏会のみの参加なら夜10時からオープニングとなるが、秀一はディナーからのチケットを購入していたため、開場時間となる6時半に合わせて王宮へ向かうべく、この日のために特別手配したロールスロイスに乗り込んだ。
ベージュの革張りのシートに秀一と美姫は並んで腰掛け、シャンパンで新年の前祝いをする。
「幼い頃に憧れた舞踏会に出られるなんて、夢のようです」
美姫が興奮気味に頬を紅潮させると、秀一が優艶な笑みを浮かべた。
「では私は、しっかりプリンセスのエスコートが出来るよう、努めましょう」
青色にライトアップされたホーフブルク王宮の前には、高級車や馬車が乗り入れていた。ふたりの乗ったロールスロイスも横付けされ、運転手がドアを開け、秀一のエスコートで美姫は車から降りた。
これから始まる舞踏会の荘厳な雰囲気に呑み込まれるようにして、ふたりは建物の中へと向かった。
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