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白い階段の真ん中に幅広に敷かれた深紅の絨毯には、既に大勢の正装した男女が溢れかえっており、華々しいムードが会場全体に漂っていた。
カクテルレセプションへと向かい、ウェルカムドリンクであるカクテルを受け取り、暫しそこで歓談しながら案内を待つ。その間に秀一は何人もの人から声をかけられ、その度に美姫は紹介され、お辞儀を繰り返した。
突然音楽が鳴り響き、オープニングイベントとしてバレエの踊りが披露された。人々の意識が一瞬にしてそちらへ集中し、熱気が上がり、ますます舞踏会の雰囲気は高まっていく。
それが終わるといよいよ大晦日の特別ディナーであるガラディナーとなり、ふたりは案内されて席へと着いた。
ガラディナーは前菜、スープ、メインコース、デザート、プティフール(焼き菓子)がついているコースとなっており、それに3種類から選べるワインがつく。特別なディナーというだけあって、味はもちろんのこと、見た目も繊細で凝っており、華やかな音楽を聴きながらふたりは優雅な食事を楽しんだ。
長テーブルの座席の為、純白のドレスに身を包んでいる美姫に対し、近くの席に座っている人々が口々に社交界デビューのお祝いの言葉をかけてくる。だが、それを秀一に訳してもらわなければいけないので、美姫は申し訳ない気持ちになった。
ゆっくりとディナーを堪能した後、秀一が美姫に声を掛けた。
「では、そろそろ参りましょうか」
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