舞踏会 #2

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 美姫も皆と同じように片膝をつくと、秀一がお辞儀をするような姿勢で手の甲に顔を近づけた。秀麗なその顔立ちと華やかな雰囲気に、美姫は眩暈を起こしそうな程に恍惚し、酔ってしまいそうだった。  秀一が促すように少し手を持ち上げ、美姫はハッとしたように立ち上がった。左手を秀一の右腕に添え、ダンスの姿勢に入る。  ウィーン出身で「ワルツ王」と謳われたヨハン・シュトラウスの代表曲「美しき青きドナウ」が流れ、皆が一斉にドレスを揺らしてワルツのステップを踏み始める。  秀一のライトグレーの瞳に見つめられながら、ふわふわとした心地で何度もターンする。  なんて優雅な時間なんだろう。  まるで、童話の世界に入ってしまったみたい……  気づけば曲は鳴り止み、周りから大喝采を浴びていた。  美姫は、秀一に華やいだとびきりの笑顔を見せ、お辞儀をした。
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