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「み、き……」
話し出そうとする秀一の唇に、美姫が人差し指を当てた。ダークブラウンの瞳が揺らめく。
「秀一さん……ウィーンに逃げましょう。
ピアニストに戻ることは出来ないかもしれないけれど……秀一さんなら、きっと別の道を見つけられるはず。
知らない土地で暮らすのは怖いけど、貴方と一緒なら私はどこでだって生きていけます。いいえ、生きていかなければならないんです。
ここにいたら、私たちは二人とも駄目になってしまいます……
その、代わり……ウィーンに旅立つ前に。
3日。いえ、2日間だけでもいいですから、お父様に会わせて下さい。会って……さよならを言わせて下さい。
お願い、します......」
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