叩扉《こうひ》 #2

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 秀一のライトグレーの瞳が、瞬きもせずにじっと美姫を見つめる。美姫もまた、秀一をまじろぎもせずに見つめ返した。  ふたりの間に、重い沈黙が流れる。  秀一は睫毛を落とし、フッと息を吐いた。  「……いいでしょう。美姫がそれ程の覚悟があるのなら、貴女の提案を受け入れます。   2日後の朝10時、成田空港のビジネスアビエーションターミナル プレミアゲートに来てください。そこから、プライベートジェットでウィーンへ発ちます」  「分かり、ました……」  美姫は息を詰めていた表情を、ようやく和らげた。
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