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その声に、躰がピクンと反応した。徐々に瞼が開かれ、娘の姿を認めた途端、誠一郎の目尻から涙が伝って零れ落ちた。
「美、姫……」
その弱々しく掠れた声だけ、じゃない。中年太りと形容してもいいぐらい肉付きのよかった父が、急激に体重を落とし、痩せこけていた。そして、頭髪に混じる白い髪。それらが、いかに僅かな期間に誠一郎が多くの辛苦を味わったのか、物語っていた。
それを見た途端、美姫はどうしようもない自己嫌悪と罪悪感に打ちのめされた。
お父様をこんな風にしてしまったのは、私。
私のせいで、お父様は……
嗚咽を漏らし、涙ぐむ美姫に、誠一郎は震える指を差し出し、頬を撫でた。愛おしく見つめるその瞳に、父親としての愛情を感じ、美姫の胸は張り裂けんばかりに痛んだ。
頬を撫でた誠一郎の手から力が抜けてベッドに落とされると、美姫はその手を両手で握り締めた。
お父様、どうか……どうか、以前のように元気になって……
祈るように、握り続ける。隣に立つ凛子は口元をハンカチで抑え、肩を細かく震わせていた。
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