自責の念

3/8
前へ
/35ページ
次へ
 その声に、躰がピクンと反応した。徐々に瞼が開かれ、娘の姿を認めた途端、誠一郎の目尻から涙が伝って零れ落ちた。  「美、姫……」  その弱々しく掠れた声だけ、じゃない。中年太りと形容してもいいぐらい肉付きのよかった父が、急激に体重を落とし、痩せこけていた。そして、頭髪に混じる白い髪。それらが、いかに僅かな期間に誠一郎が多くの辛苦を味わったのか、物語っていた。  それを見た途端、美姫はどうしようもない自己嫌悪と罪悪感に打ちのめされた。  お父様をこんな風にしてしまったのは、私。  私のせいで、お父様は……  嗚咽を漏らし、涙ぐむ美姫に、誠一郎は震える指を差し出し、頬を撫でた。愛おしく見つめるその瞳に、父親としての愛情を感じ、美姫の胸は張り裂けんばかりに痛んだ。  頬を撫でた誠一郎の手から力が抜けてベッドに落とされると、美姫はその手を両手で握り締めた。  お父様、どうか……どうか、以前のように元気になって……  祈るように、握り続ける。隣に立つ凛子は口元をハンカチで抑え、肩を細かく震わせていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加