自責の念

6/8
前へ
/35ページ
次へ
 和室の障子は開けっ放しになっていて、そこから応接テーブルと椅子が見えた。椅子には、力を失くした母が項垂れて座っていた。  こんなに活気のない母を見るのは、初めてだった。ログハウスに訪れた際のあの鬼気迫る様子は、夫を救いたいという一心での行動だったのだろう。  もし、私がウィーンに旅立てば……秀一さんと私は、叔父と姪の恋人関係であると認めたことになる。  世間からの批判は、ますます大きくなるだろう。来栖財閥は、今以上の危機に瀕することになる。  そんな中、社長であるお父様は倒れ、頼りになるはずの秘書のお母様もお父様が倒れたことにより、気力を失っている。  このままでは……来栖財閥の崩壊は、免れない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加