愛憎の果て

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 「美姫。残念ですが、貴女がここにいようがいなかろうが、兄様の余命が変わることはありません。   貴女は、これから私とウィーンに行くのです」  鋭い、ナイフのような言葉が突き刺さる。  だが、それでも美姫の決心が揺らぐことはなかった。  「私は......全てを捨てて、秀一さんとウィーンに行くことなど、出来ません。   こうなってしまったのは、私の責任です。私はこれからお母様と協力して、来栖財閥の信用を取り戻し、お祖父様とお父様が築き上げた来栖財閥を守っていくつもりです」    秀一は美姫の頬を大きな手で包み込み、美しいライトグレーの瞳を近づけた。  「美姫、今まで会社経営に携わったことのない貴女ができることなど、何もありません。来栖財閥は崩壊します。こうなることは、運命だったのです。   私は貴女をどこにも行かせません。貴女だって、私から離れられるわけがないのです。   美姫、両親への情は捨てるのです。   私だけが貴女の世界。私だけいれば、それでいいのです」
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