愛憎の果て

6/15
前へ
/35ページ
次へ
 美姫が潤んだ瞳で切なく秀一を見つめた。  「ふたりの関係が発覚してログハウスに辿り着いた時、不思議と不安を感じなかったんです。   これからはなんの心配もしなくてもいいんだ、秀一さんとふたりきりでずっといられると思って、幸せでした。   けれど……生活するうちに、分かったんです。秀一さんは、ピアノなくして生活することは出来ないって。   貴方は、ピアニストになるべくして生まれた人です。『ピアノ界の巨匠』モルテッソーニですら認める、類い稀な才能を持っているんです。   私は……私のために、その才能を捨てて欲しくないんです」  本当は、ずっと桃源郷に住んでいたかった。幸せな夢の中に。  でも、それは出来ないと気付いたから......
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加