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美姫が潤んだ瞳で切なく秀一を見つめた。
「ふたりの関係が発覚してログハウスに辿り着いた時、不思議と不安を感じなかったんです。
これからはなんの心配もしなくてもいいんだ、秀一さんとふたりきりでずっといられると思って、幸せでした。
けれど……生活するうちに、分かったんです。秀一さんは、ピアノなくして生活することは出来ないって。
貴方は、ピアニストになるべくして生まれた人です。『ピアノ界の巨匠』モルテッソーニですら認める、類い稀な才能を持っているんです。
私は……私のために、その才能を捨てて欲しくないんです」
本当は、ずっと桃源郷に住んでいたかった。幸せな夢の中に。
でも、それは出来ないと気付いたから......
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