愛憎の果て

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 「秀一さんだって、気づいていたはずです。   貴方の指が、全身が、頭が、心が、魂が……ピアノを求めています。それは、貴方の生活の一部であり、肉や骨のように、躰の一部であり、魂を形作っているものなんです。   私はそれを、奪う事など出来ない。   秀一さん、貴方は世界中の聴衆を魅了することが出来る、一流のピアニストなんです。   世界が、貴方が戻ってくるのを待っています。   私の元になど、引き止めてはいけないんです……」  ログハウスで、魔力に引き寄せられるかのようにピアノに向かい、取り憑かれたかのように一心に曲を奏でる秀一の姿を思い出し、美姫は睫毛を伏せた。
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