叩扉《こうひ》 #2

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 凛子はようやく顔を見せた娘の姿に、安堵したように息を吐いた。だが、すぐに険しい顔つきに戻った。  「あなたたちのことが週刊誌に載った後……世間ではこのニュースが大きく取り上げられ、大変な騒ぎになりました。私たちの住む自宅や会社には、マスコミが大挙して押し掛けました。   緊急重役会議を開いた際、その原因となった弟である秀一さんと娘である美姫の恋愛関係を問い詰められたお父様は責任問題を突きつけられ、矢面に立たされました。   世間からの来栖財閥の評価は地に落ち、株価は暴落し、不買運動まで起こっています。このままでは、一部の工場を閉鎖し、企業を縮小、あるいは買収される恐れもあります。   そんな中、お父様は来栖財閥を守るために奔走し、寝る間も惜しんで本社や支社、下請け企業や傘下企業、取引先などを精力的に回りました。   もちろん私も同行し、あらゆる限りの手を尽くしました。けれど、一度失った信用を取り戻すことは簡単にはいきません」  苦境に立たされた来栖財閥の現状を聞き、美姫は胸が塞がる思いだった。
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