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父の病室にて美姫が母に話したのは、そのことだった。両親や財閥に迷惑をかけたことを謝り、これからのことについて話し合った結果、そう決意したのだ。
秀一が美姫の両肩に手を置き、彼女に迫る。
「何、を……言っているのですか。貴女が愛しているのは、私なのですよ。愛してもいない男と結婚するなんて、本気ですか!?
貴方が私のことを忘れられるはずなどないでしょう!私たちは躰も精神も見えない鎖で縛られているのです。離れられるはずなど、ありません!
絶対に……離さない……」
美姫は、ギリギリと締め付けられる肩の痛みに顔を引き攣らせた。秀一のライトグレーの瞳は、あのピアノルームで見せた狂気の色と共に悲痛な哀しみの色も含んでいた。
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