叩扉《こうひ》 #2

4/12
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 凛子が、苦悶の表情を浮かべる。  「そんな中お父様は、無理がたたって……昨夜、取引先との会談中に心不全を起こして倒れられました。   予断を許さない状態で……覚悟しておくよう、医師に言われました」  「そ、んな……」  父がそんなことになっていたと知り、美姫はショックを隠しきれなかった。  凛子が美姫の手を取り、顔を近づける。その手は凍っているように冷たく、震えていた。  「お願い、美姫。病院に今すぐ、来てちょうだい。貴女だけが、頼りなの。お願い……」  いつも明るく、凛とした母が、今は頼りなげに弱気な表情を見せ、肩が小刻みに震えている。  「お母、さま……」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!