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凛子が、苦悶の表情を浮かべる。
「そんな中お父様は、無理がたたって……昨夜、取引先との会談中に心不全を起こして倒れられました。
予断を許さない状態で……覚悟しておくよう、医師に言われました」
「そ、んな……」
父がそんなことになっていたと知り、美姫はショックを隠しきれなかった。
凛子が美姫の手を取り、顔を近づける。その手は凍っているように冷たく、震えていた。
「お願い、美姫。病院に今すぐ、来てちょうだい。貴女だけが、頼りなの。お願い……」
いつも明るく、凛とした母が、今は頼りなげに弱気な表情を見せ、肩が小刻みに震えている。
「お母、さま……」
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