叩扉《こうひ》 #2

5/12
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 秀一が、美姫の手を掴む凛子の手を跳ね除けた。  「美姫。私たちは全てを捨てる覚悟でここに来たことを、覚えているでしょう?   今までの生活も、仕事も、家族も、何もかももう、捨てたのです」  秀一の言葉に、凛子へ寄り添おうとした美姫の足が止まる。  そうだ、私は何もかも捨てる覚悟でここに来た。  今更もう、戻れるはずない……  美姫は潰れそうな胸の痛みと共に、拳をギュッと握り締めた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!