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押し返された秀一は、美姫の言葉にショックを受けたように見つめた。長い睫毛を伏せた美姫の陶器のような肌に、影が落ちる。
「お母様に、私たちの居場所を知られてしまいました。マスコミにここを突き止められのも、時間の問題でしょう……」
そうなれば、ここも安全とは言えない。このログハウスにマスコミが大挙して押し寄せれば、私たちに逃げ場などない。もうここは、私たちにとって桃源郷ではなくなったんだ。
いいえ…。桃源郷など、本当は最初から存在していなかった。
あれは現実逃避した私達が見た、束の間の白昼夢。
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