愛憎の果て #2

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 男が秀一を席に下ろし、シートベルトを掛ける。意識を失い、手足をだらんと下げている秀一の様子を見て、美姫の胸はズキズキと痛んだ。  「本当に……いいんですか」  智子が、美姫を心配そうに見つめる。  「はい。お願いします」  美姫は青ざめた顔のまま、しかし、はっきりと言った。  「私がもいでしまった秀一さんの羽を……どうか、取り戻させて下さい。   彼が世界に羽ばたくピアニストとなれるよう、支えてあげて下さい」  智子は、意識を失っている秀一に目を向けた。  「来栖さんは……私を恨むでしょうね。   それでも私は……マネージャーとして、世界に誇るピアニストである来栖秀一を支えていくつもりです」  「ありがとう、ございます……」  美姫は、深々と智子にお辞儀をした。
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