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秀一が呼吸を乱しながら立ち上がり、指揮者のフェルナンデスに握手を求めた。すると、フェルナンデスが秀一に歩み寄り、固く抱擁した。
観客の大歓声はまるで大波のように会場を揺らし、拍手が耳の鼓膜をつんざくように響く。
続いてコンマスと握手を交わすと、秀一はピアノの正面に立ち、観客に向かってお辞儀をした。
いつものように優美で余裕の笑みを浮かべる秀一ではない。疲弊しながらも、乱れた髪のまま肩を大きく上下させ、深く頭を下げている。
スタンディングオベーションで迎えられる大きな喝采と拍手。会場の熱気が、画面からも伝わって来る。
演奏が終わってからも、美姫の涙は止まることはなかった。
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