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家を出た僕は、走った。
とにかく、家から離れたかった。
そして家が見えなくなったところで立ち止まり、叫んだ。
言葉にならない、腹の底から湧き上がる叫び。
雪の降る夜空に向かって、喉が嗄れるくらい叫んだ。
これまでの溜めていた思いも全部ぶつけるかのように。
(きっと葵は、助からない…)
両手についた乾いた血を見て、僕は悟っていた。
あの出血は尋常じゃなかったし、あの瞬間に呼吸も止まっていた。
それから僕があいつを殺して、救急車を呼んだけど、
長い間呼吸をしていなかったのだ。病院に着いても、きっと…。
僕の頬を、一筋の涙が伝う。
母の前で見せた笑顔は、僕の強がりだ。
(ごめん、葵………)
心を落ち着け、流れた涙を袖で拭い、僕は決意を固める。
犯してしまった罪を償う決意を。
後悔はしていない。
けれど、罪は罪だ。
葵を守れなかった罪を、
僕は一生をかけて償っていくつもりだ。
家から歩いて15分のところに、警察署があることを知っていた。
だから僕は、歩いて出頭した。
入口の警察官に血だらけの姿を見て止められてしまったので、
僕は入口で自分の罪を告白した。
「僕は、木田庵と言います。父親を包丁で刺して殺しました。
僕を、逮捕してください」
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