8.

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家を出た僕は、走った。 とにかく、家から離れたかった。 そして家が見えなくなったところで立ち止まり、叫んだ。 言葉にならない、腹の底から湧き上がる叫び。 雪の降る夜空に向かって、喉が嗄れるくらい叫んだ。 これまでの溜めていた思いも全部ぶつけるかのように。 (きっと葵は、助からない…) 両手についた乾いた血を見て、僕は悟っていた。 あの出血は尋常じゃなかったし、あの瞬間に呼吸も止まっていた。 それから僕があいつを殺して、救急車を呼んだけど、 長い間呼吸をしていなかったのだ。病院に着いても、きっと…。 僕の頬を、一筋の涙が伝う。 母の前で見せた笑顔は、僕の強がりだ。 (ごめん、葵………) 心を落ち着け、流れた涙を袖で拭い、僕は決意を固める。 犯してしまった罪を償う決意を。 後悔はしていない。 けれど、罪は罪だ。 葵を守れなかった罪を、 僕は一生をかけて償っていくつもりだ。 家から歩いて15分のところに、警察署があることを知っていた。 だから僕は、歩いて出頭した。 入口の警察官に血だらけの姿を見て止められてしまったので、 僕は入口で自分の罪を告白した。 「僕は、木田庵と言います。父親を包丁で刺して殺しました。 僕を、逮捕してください」
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