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彼女がチャリィを殺害した動機についても、そのような心情が起因している。
言わば、自暴自棄。
先行き不透明な自らの生活に対するストレスが、いつしか彼女を殺戮専業主婦へと変えた。
滅亡寸前の日本を救える者などこの世には存在しない――そんな投げやりな不信感が、今回の犯行の引き金となった。
チャリィの命を奪えば、勇次は登校を断念する――そう思っていた時期がオバにもあった。ゆえに、凶行に及んだ。ゆえに、チャリィは死んだ。
しかし勇次は、学校へ来た。
ユカリの励ましを受け、ともに手を繋ぎ歩いてきた。
「俺たちは学校へ行く!!」
二人の意志は固い。
立ちはだかるすべてを振り払う勇気が、彼らには宿っている。
未来へと突き進む彼らにとっては、オバ=チャンの体脂肪まみれの肉体など壁にすらならない。
【……上等やで……】
ゆえに、オバは迎え撃つ。
次世代の意志と全力でぶつかりあうことが、彼女にとっての『おはようございます』――
つまりは、朝の挨拶なのだから。
【オヴァアアアアアアアアッーーーーーーーー!】
オバ、高揚する。
振り乱すその横断旗は、もはや漆黒をまとっている。
次なる必殺技の段階へと既に突入しているのだ。
【オバの本気をみせたるでぇっーーーー!】
風車のように横断旗を振り回すオバ。
それをゆっくりと頭上へやると、晴れ渡っていた空が陰りを示した。
勇次たちの上空に、暗雲が創り出されたのである。
【天雨降振……〝カー・サンダー〟!!】
詠唱するオバ。
その言霊に応じ、暗雲から四両編成の巨大なデブリトレイン(※路面電車の最終進化形態)の頭部がズルリと出現――。
唐突に浮力を失ったそれは、横断中の二人をめがけ、まっすぐに降り落ちる。
「きゃあああああああああああっ!!」
本日二度目の悲鳴を上げるユカリ。
しかし今回の叫びに関しては、正真正銘、頭上から路面電車が降ってくることに対する恐怖や戸惑いを表現したものである。
気象予報士の資格を持つ彼女ですらも、この悪天候は予期していなかった。
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