奈落ジャンクション横断セヨ

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【り、りっぱやなあ……】  オバ、感心する。  溢れんばかりの交通渋滞(スクランブル)を省みず、堂々と前進を続ける生徒たちの生き様に、ついに敬意を示してしまったのだ。   「――!!」  その心の揺らぎを、勇次は見逃さなかった。 「今だっ!! ユカリ!!」  勇次叫ぶ。  周囲で荒ぶるエンジン音にかき消されないよう、大きな声で叫んだ。 「まかせて!!」  ユカリは、それを聞き逃すことなくしっかりと鼓膜でキャッチし、より大きな声で力強く言葉を返した。 「あたしだって、戦えるんだから!」  意気込んだユカリは、右肩のスクールバッグへ手を突っ込む。  そこから取り出したるは、一台の古代携帯端末――《ガラパゴス=テレフォン》。ユカリのメイン・ウエポンである。 「あたしの攻撃を、今からあなたに届けます」  二つ折りのボディを開き、オバにアンテナを向けるユカリ。  歩行者の利点を活かした素早い動作に、オバの対応は遅れがち。 【なんやあっ!?】   『鎖縛の感情(チェーン・メール)!!』      アンテナから発せられた鎖状の高周電波が、オバの肉体へ巻きついた。 【あかんっ! しもうた!】  オバ、拘束される。  見えない電波に縛られる奇妙な状態が始まった。 「絶対に逃さないんだから!」  さらにユカリは、早業のブラインド・タッチで秘密のパスワードを設定。  指定された四桁の数字を解き明かさない限り、そのロックからは逃れられない。
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